シニアマーケティングとは?増加するシニアを分類し定義づけ。各シニア毎にマーケティングを事例と共に紹介

シニアマーケティングとは?

シニアマーケティングとは、特有の趣味嗜好や活動パターンを持つ団塊世代など
65歳以上の男女をターゲットとしたマーケティングです。
シニアが真に求める商品やサービスをつくり、最適なシニアにアプローチするための活動全てになり、
集客においてはシニアが活用するメディアや活動場所を理解した上で施策を策定することが重要です。

令和元年度に発表された内閣府「令和元年版高齢社会白書」によると、
平成30(2018)年10月1日現在の総人口は、1億2,644万人になり、
総人口に占める65歳以上の割合は28.1%に上ります。
昨年の統計では、高齢化率が26.6%であったことからも加速度的に高齢化率が上昇しております。

日本の人口に占める高齢化率の上昇と供に、
「シニアマーケティング」の重要性が問われるようになりました。

今回、シニアマーケティングに必須のポイントである、
シニアの定義、シニアビジネス事例、シニアマーケティングによる広告事例、
更に詳しくシニアマーケティングを勉強できるように参考書籍を紹介させて頂きますので、
ぜひ参考にしてください。

シニアとは?

一般的には60歳以上の方がシニアと認識されますが、
2,500万人以上のシニアを一括りにするのは人数が多すぎるため、
まずにシニアを以下のように定義することができます。

アクティブシニア

アクティブシニアとは、65歳〜70歳前半(人によっては80代も)の
いわゆる心身ともにお元気で自分をシニアと思っていない世代のことを指します。

いわゆる団塊の世代が対象になることが多いですが、年代別の定義ではなく、
たとえ80代であってもお元気で意欲的な方であればアクティブシニアと呼びます。

団塊の世代が中心のアクティブシニアは、戦後まもなくの時代で育ち、
高度経済成長期とともに過ごされています。

定年退職したばかりで、心も体もお元気な方が多く、
自分のことを高齢者だとは思っていません。

第一線を引退した後も、仕事に対する意欲も高く、
プライベートでは趣味や健康増進に関心がある世代。

金銭面のゆとりもあることから、「健康食品を定期的に購入している」
「週に3日はジムに通っている」「カメラや旅行などの趣味に興じている」など
様々なサービスを利用しています。

また、各企業によりアクティブシニア向けのサービスや商品も拡充しています。

ノンアクティブシニア

ノンアクティブシニアとは、後述するパッシブシニアとアクティブシニアとの中間に
位置する層のことで、具体的には70歳〜80歳の完全に元気とは言えないまでも、
自分の生活は自分で送れるという方のこと。

日常生活は自分で送れるが、健康や生活に1つや2つは不安が出始め、
不便だと感じることも増えています。

たとえば、「日常生活は送れるけれど自動車免許を返納し、
自分だけで買い物に行く手段がない」又は
「病院にかかるほどではないが足腰の痛みがあり
以前よりも長く活動できなくなった」など。

昔のように元気というわけではないけれど、
1つや2つの不便や不安がありながらも日常を送られている方。

パッシブシニア

パッシブシニアとは、いわゆる介護サービスや
日常的な医療を必要とするシニア層のことです。

医療や介護が必要で他の方からの支援や助けがないと生活できません。
自分のことを「高齢者」だと認知しており、
介護保険サービスや家事支援サービスが必要だと自覚しています。

このようにシニアマーケティングを行う場合には、
シニア層をひとくくりにするのではなく、
最低限この3つの分類を意識してマーケティング戦略を練る必要があります。

また、アクティブシニアが最も活発で様々なサービスを利用する可能性が高いことから、
マーケティングの対象をアクティブシニアに設定している企業も増えています。

しかし、仮にアクティブシニアを65歳〜74歳までの前期高齢者と位置付けた場合、
何度もお伝えしているように平成30年10月時点では、1,760万人と、
75歳以上の後期高齢者の1,798万人を下回っています。

つまりアクティブシニア向けの商品やサービスを展開すれば、
売上につながるという単純な構造ではなく、
実はノンアクティブシニアの方が母数の多い状況も考慮しなければなりません。

ここが、シニアマーケティングを展開する上で非常に難しいところです。
単に「これからは、高齢者が増えるから介護サービスに参入すればどうか」と
考える企業がいらっしゃいますが、シニア全体からみると
20%程度しか要介護認定を受けていない現状も。

このように、シニアをひとくくりにして安易にサービスを展開すると、
失敗につながりかねません。

シニアビジネス事例

ここでは、シニア向けビジネス事例について紹介させていただきます。

事例①「趣味人倶楽部」

趣味人倶楽部サイトトップページ

参考:趣味人倶楽部
https://smcb.jp/

趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)は、趣味でつながる
大人世代のためのSNSを展開しています。具体的には、日記・写真・登山・自転車・
ダンス等の趣味を通じて新しい仲間との出会いと交流を楽しむことができます。

登録や利用は無料で、会員が主催する趣味のコミュニティは約3.5万件もあるそうです。

会員同士でダイレクトにメッセージのやりとりができる「ミニメール」や
自慢の写真を投稿できる「フォト」、日々の出来事やニュース、
俳句などを気軽に投稿できる「日記」機能など、アクティブシニア向けの機能が充実。

また、WEB上で出会った仲間と実際に会ってカラオケやハイキングなどを
楽しめる各種イベントが開催されており、大切な仲間との出会いを楽しめます。

事例②「まごチャンネル」

「まごチャンネル」サービストップページ

参考:まごチャンネル
https://www.mago-ch.com/

まごチャンネルは、株式会社チカクが運営する写真共有サービス。
孫の写真を離れて暮らす両親宅のテレビに気軽に送信できるだけでなく、
機械操作が苦手なシニア層も、お使いのテレビのリモコンのスイッチを
押すだけと非常に簡単に操作ができます。

子から親へのプレゼントにも最適なだけでなく、スマートフォンや
カメラ等の操作が苦手な親世代も気軽に孫の写真を閲覧できるという
高い価値を提供しています。

まごチャンネルの設置も非常に簡単で、ご実家のテレビに専用の
チャンネル受信ボックスをつなぐだけ。ケーブルも2本しかなく、
通信機能も内蔵しているからWi-Fiいらずにすぐに使えるのが特徴。

料金は、まごチャンネルの本体費用とサービス利用料金(月額)となります。
シニア向けに高い価値を提供しながら、サブスクリプションで中長期的に
収益を確保するマーケティング戦略は非常に参考になります。

事例③「みまもりほっとライン」

「みまもりほっとライン」サービストップページ

参考:みまもりほっとライン
https://www.mimamori.net/

みまもりほっとラインは、まほうびんで有名な「象印マホービン株式会社」が
提供している高齢者みまもりサービスです。

具体的には、無線通信機を内蔵した「電気ポット」を遠く離れたご両親や
祖父母が使用することで、離れて暮らす家族の安否が確認できます。

電気ポットの使用状況を可視化し、遠く離れた家族の携帯電話や
パソコンにメールでお知らせする機能がついています。

また、ホームページからご契約者様専用ページで1週間の電気ポット使用状況を
グラフで確認できるため、両親や祖父母の生活リズムも把握。

「離れて暮らす息子や孫に見守って欲しいけれど、
負担をかけたくない」というご両親や「離れて暮らす両親や
祖父母の健康を確認したい」というお子様などから高い支持を得ています。

累計契約者が1万2千件を超えているそうです。
料金内容については、ポット1台につき初回契約料が5,000円(税別)、
サービス利用料が3,000円/月(税別)に設定されています。

さきほどご紹介しました「まごチャンネル」同様に、初回費用のほか、
サブスクリプションを導入し永続的に収益を確保している点でとても参考になります。

事例④「カーブス」

「やすや」サービストップページ

参考:カーブス
https://www.curves.co.jp/

カーブスは、これまで運動を習慣にすることが苦手であった女性に目を向け、
シニア世代でも気軽に運動を習慣化できるように1回30分、
予約なしでコーチと一緒に運動ができる「30分フィットネス」を展開しています。

運動が苦手でも体に痛みがあっても無理のない範囲で運動ができることから、
シニア層からも支持を得ており、会員数は全国で約86万人に。(2019年10月時点)

全国に2,000店舗以上展開しており、お近くの店舗を探しやすく、
通いやすいのが最大の特徴です。

今はなんとか生活できているけれど、今後の健康に不安があるアクティブシニアや、
生活はできているけれど体に痛みがありできる運動に限りがある
ノンアクティブシニアの心を掴んでいます。

事例⑤「やずや」

参考:やずや
https://www.yazuya.com/

健康食品や健康サプリメントを取り扱う「株式会社やずや」は、
1975年に創業し、1992年には初のオリジナル商品である「養生青汁」を発売しています。

創業当初より通信販売に力を入れており、オンラインショップにおいても
シニア層が一目で購入したい商品に辿りつけるようWEBサイトが設計されています。

「野菜不足が気になる」「乳酸菌を摂りたい」など
お悩み別に気になる健康食品やサプリメントを検索できるのも魅力的です。

そのほか、WEBサイト内の文字やリンクが大きめに設計されていることで、
高齢の方でも読みやすく親しみやすいデザインです。

シニアマーケティングにおける広告成功事例

シニアビジネスにおける集客の事例を紹介させていただきます。

死亡保険のマーケティング広告事例

死生観やライフスタイルの在り方は時流により十人十色、千変万化していくものですが、
近年では「終活」という言葉が一般化したようにシニアライフを「どのように過ごすか」だけでなく、
「『死』とどのように向き合うか」や「残された家族や知人に何を残せるか」といった
「生きること」に焦点をあてて、余生でできること、できないことを前向きに考えていこうという
死生観が広く認知されるようになりました。
それに伴い、葬儀や保険、遺産相続といった「終活ビジネス」の需要が高まっており、
その市場規模は増加傾向にあります。
ここでは、死亡保険会社が資料請求件数を500件、申込件数50件の獲得に成功した
マーケティング成功事例を紹介します。

マーケティングの課題

保険のみに限らず、葬儀や遺産相続などの「終活ビジネス」で新規顧客を獲得するには、
直接的に商材の購入を促すのではなく、「資料請求」や「セミナー(無料説明会)」といった施策を行い、
サービス理解を深めた上で契約者を獲得するケースが多くみられます。
そのため、今回紹介する保険会社様も「健康」や「美容」、「旅行」といった充実した
シニアライフに関心の高いアクティブなシニアへ広告を展開する必要がありました。

媒体を選んだ理由

今回紹介する通販会社様は、大きく2つの理由から広告媒体を選定しました。

1)年間予約購読にて事前に料金を支払うので高い購読率を見込める
2)会員制の通販や旅行サービスなどを展開しているため、アクティブシニアへのリーチを見込める

この死亡保険の会社様は、シニア向けの定期購読誌で広告を展開しました。
この定期購読誌は、国内トップクラスの発行部数を誇り、読者へ出版物だけでなく、
通販や旅行などの会員サービスを提供している上場企業により発行されている媒体です。
また、読者の平均金融資産は2,800万円となっており、読者の平均年齢も69.3歳となっているため、
比較的裕福で消費にアクティブなシニアの見込み客獲得を期待できました。

結果

結果、死亡保険の会社様は、資料請求件数を500件、申込件数50件の獲得に成功しました。

介護サービスつき住宅のマーケティング広告事例

「超高齢社会」の到来が見込まれる現代において、
『介護市場』も市場規模の増大を続けている成長産業の1つです。
「令和元年 情報通信白書のポイント」の「第1号被保険者(65歳以上)の
要介護度別認定者数の推移(図1-2-2-8)」によると、要介護認定者は平成28年の時点で
618.7万人までにも上り、2007年の数値と比較すると10年ほどで約1.4倍にまで増大していることが分かります。
「超高齢社会」の到来から今後も要介護者数が増加し、そのニーズは高まると推測できます。
ここでは、シニアマーケティングにおいて、100件以上の問い合わせを獲得し、
うち92件が入居した介護サービスつき住宅の会社様の事例を紹介させて頂きます。

マーケティングの課題

この介護つき住宅は、不動産物件に分類される商材ですが、「介護サービス」が
付随していることをセールスポイントとしている物件であるため、シニアへのリーチを見込める
メディアで広告を展開する必要がありました。
「不動産物件」はエリアマーケティングを考慮して広告を展開します。
また、「介護施設」も「自身の住居の近辺」や「孫や息子の家族が住むエリアの近辺」といった条件で
検討される傾向にあるため、地域の情報に特化したメディアで広告を展開する必要がありました。

媒体を選んだ理由

今回紹介する介護施設の会社様は、大きく2つの理由から広告媒体を選定しました。

1)老人ホーム周辺エリアで広告を展開できること
2)「市役所」という行政機関が発行しているため信頼性が高い

この介護つき住宅を提供する不動産会社は、市が発行している広報誌で広告を展開しました。
行政の告知、公共施設やサービスの案内などの情報を発信しており、
「市役所(行政機関)」が発行しているという特徴から信頼性が高い媒体であるという特徴がありました。
また、シニア層の精読率が高く、50代以上の平均精読率は80%以上となっており、
市内のシニア層の見込み客獲得を期待できました。

結果

結果、死亡保険の会社様は、資料請求件数を500件、申込件数50件の獲得に成功しました。

シニアマーケティングにオススメな書籍

シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか ―新しい大人消費が日本を動かす

https://www.amazon.co.jp/dp/4532320453/

お金、健康、食事、エンターテインメントなどカテゴリごとにシニア市場を分析し、なぜシニアマーケティングが成功しないのかを体系的に理解できる。

成功するシニアビジネスの教科書「超高齢社会」をビジネスチャンスにする技術

https://www.amazon.co.jp/dp/4532319005/

団塊世代の一斉退職など、シニア市場でビジネスに
取り組もうとしているが具体案がまとまらない。
又は、上司からの指示でシニアビジネスに取り組んでいるが
何からスタートすれば良いかわからないという企業担当者向けの書籍です。

超高齢社会マーケティング—8つのキーワードで攻略する新・注目市場の鉱脈

https://www.amazon.co.jp/dp/4478090416/

超高齢社会における市場開発をどう捉えるか、
いかにして高齢者にアプローチすれば良いのかを「高齢市場の全体像をつかむ」
「攻略の切り口を設定する」「マーケティングを実践する」の3ステップで解説。

 

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